行政書士 オフィス薫

ー遺言書の書き間違いの対処法|慌てず確認するためのポイントー

 

遺言書を書き間違えたときにまず確認すること

遺言書を書いていると、漢字を間違えたり数字を書き違えたりすることがあります。大切なのは、書き間違いに気づいたときに慌てて消したり書き足したりせず、落ち着いて状況を確認することです。

まずは、間違えた内容が「遺言の本質」に関わる重大なものかどうかを見極めます。相続させる財産の内容や相続人の氏名・続柄、配分割合などに誤りがあると、解釈をめぐってトラブルになりやすく注意が必要です。

どの程度の間違いなら問題になりやすいか

財産の種類や金額、遺産を受け取る人の特定に関わる部分は、とくに慎重に確認したいポイントです。

訂正前に勝手に消したり書き足したりしない

自筆証書遺言の場合、書き間違いを修正したくても、二重線で消して書き直すだけでは法律上の要件を満たさないおそれがあります。訂正方法が民法で細かく決められているため、独自のやり方で修正してしまうと、その部分だけが無効になったり、最悪の場合、遺言全体の有効性が争われてしまうこともあります。

よく分からないまま訂正を重ねると、かえって複雑になりやすいものです。不安があれば専門家に相談するか、新しく書き直すことも検討しましょう。

自筆証書遺言を書き間違えた場合の正しい訂正方法

自筆証書遺言の訂正は、民法で次のようなルールが定められています。代表的なポイントを整理すると、次のようになります。

・訂正したい箇所に二重線を引き、その近くに訂正印を押す
・欄外や末尾に「どこを何と訂正したか」を自書する
・訂正文の近くにも署名と押印をする

つまり、「誰が、どこを、どのように訂正したのか」がはっきり分かるようにしておくことが重要です。この要件を守らない訂正は無効となるおそれがあり、その場合は訂正前の内容が優先されると考えられます。

訂正が多いときは書き直したほうが安心

一度や二度の軽微な修正であれば、上記の要件を守って訂正する方法でも対応できます。しかし、何度も書き間違えて訂正だらけになってしまうと、第三者から見て内容が読み取りにくくなり、紛争リスクが高まります。

書き直すときに意識したいポイント

訂正印や欄外の加筆が増えすぎてしまった場合は、思い切って最初から書き直したほうがすっきりします。その際は、日付を最新の日付にし、前の遺言よりも新しいことが誰にでも分かるようにしておきましょう。

公正証書遺言の書き間違いと対処方法

公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう形式の遺言です。ご本人が文書を自筆する必要はなく、公証人が読み上げ、内容を確認しながら作成します。作成の過程で内容の誤りに気づいたときは、その場で修正してもらえば問題ありません。

完成後に内容を変えたくなった場合

すでに完成した公正証書遺言の内容を変更したい場合は、「変更用の遺言」や「新しい遺言」を作成する流れになります。公正証書遺言は、後から書き足したり、一部だけを書き直したりすることはできません。再度公証役場に出向き、公証人の関与のもとで新しい内容を整える必要があります。

公正証書遺言を選ぶメリット

公証人が内容をチェックしてくれるため、形式の不備や書き間違いが起こりにくいのが公正証書遺言の大きなメリットです。自筆に自信がない方や、財産や相続関係が複雑な方に向いている方法といえます。

遺言書の書き間違いを防ぐためのポイント

そもそも書き間違いを減らすためには、書き始める前の準備が大切です。財産の一覧や相続人の情報をあらかじめ整理しておくことで、記入時の迷いや勘違いを減らせます。また、下書きを作成してから清書することで、表現のゆれや数字の誤りにも気づきやすくなります。

よくある書き間違いとしては、次のようなものがあります。

・相続人の氏名の漢字や生年月日の誤記
・不動産の所在地や地番、面積の書き間違い
・預貯金の金融機関名や支店名、口座番号の誤り

これらは、一見小さなミスに見えても、解釈が分かれやすいポイントです。できれば、書き終えたあとに家族以外の第三者や専門家にチェックしてもらうと、客観的な視点で誤りを見つけてもらいやすくなります。

不安なときは専門家に相談する

遺言書は、ご自身の最期の意思を形にする大切な書類です。「この書き方で本当に大丈夫だろうか」「訂正のしかたに問題はないだろうか」と不安を感じたら、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

早めの準備がトラブル防止につながる

専門家に相談することで、書き間違いに対する適切な対処法だけでなく、遺言内容が法律上問題ないか、相続人同士のトラブルを生みにくいかどうかといった点もあわせて確認できます。将来の争いを防ぐための「保険」と考えて、元気なうちから準備しておくと安心です。