新しく配偶者居住権という権利が創設されました。
大きなきっかけになったのは、結婚していない男女間に生まれた「婚外子」と、
結婚した男女間に生まれた「婚内子」で、取り分が違うのは「法の下の平等を定めた憲法に反する」としたものでした。
婚外子にも婚内子と平等に相続する権利があると認めたということです。
これを受け、婚外子が婚内子と同じ割合で財産を相続することになると、
夫に先立たれた妻が、場合によっては遺産を分けるために住んでいる家を手放さないといけなくなるかもしれず、
配偶者を保護する必要がある、という考えがスタート地点になったようです。
配偶者居住権とは、残された配偶者が被相続人の死亡時に住んでいた建物を、
亡くなるまで又は一定の期間、無償で使用することができる権利です。
配偶者居住権は配偶者が住んでいた建物に対する権利です。
配偶者居住権が成立する要件は次の3つです。
・亡くなった人の配偶者であること
・その配偶者が亡くなった人が所有していた建物に亡くなったときに居住していたこと
・遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判により取得したこと
配偶者居住権の施行時期
相続法の改正は、令和元年7月1日に施行済みですが、配偶者居住権の施行については、令和2年4月1日となります。
この施行の考え方について補足ですが、
令和2年4月1日以降の相続開始案件から遺産分割等で配偶者居住権を設定できることとなります。
すなわち、令和2年4月1日以降に亡くなられた方の相続案件からということで、
例えば、亡くなられた日が令和2年3月以前で遺産分割日が令和2年4月1日以降の場合は配偶者居住権は設定できません。
また、遺言で配偶者居住権を遺贈することができますが、
遺言で遺贈する場合には令和2年4月1日以降に作成された遺言のみ有効ですので注意しましょう。
配偶者居住権は、相続発生した時点で、その自宅に住んでいた配偶者にだけ認められ、かつ、配偶者居住権の登記が必要になります。
配偶者居住権は、元所有者に相続が発生した時点で、その自宅に住んでいた配偶者にだけ認められますので、
別居をしていた夫婦の間では認められません。
配偶者居住権と登記
配偶者居住権は上記の成立要件を満たしていれば権利として発生していますので登記が効力要件ではありません。
それならお金かけてまで登記する必要ないと思うかもしれませんが、
配偶者居住権を登記しないと善意の第三者に対抗することができません。
したがって、配偶者居住権を設定した場合には早めに登記をしましょう。
なお、配偶者居住権の登記は、配偶者と居住建物の所有者との共同登記となります。
また、配偶者居住権の登記ができるのは建物のみでその敷地である土地には登記ができませんので注意が必要です。
配偶者居住権は売却できない
さらに気を付けるポイントは配偶者居住権は売却できないことと、
配偶者の死亡によって消滅するため、相続させることはできない点です。
配偶者居住権を相続した配偶者は、その権利を売却することはできません。
この権利は、あくまで配偶者にだけ認められた特別な権利なのです。そのため、人に売却することはできません。
また、配偶者居住権は、その配偶者の死亡によって消滅するため、その権利を誰かに相続させたりすることもできません。
配偶者居住権が消滅した後は、その他の権利を相続していた人が、その不動産の権利を丸ごと所有することになります。
つまり、通常の所有権という形に戻るというわけです。
配偶者居住権が消滅した後は、所有権を持っている人が住むのも、売るのも、取り壊して建て替えるのも、全て自由です。