公正証書遺言の効力が消える?遺言が無効になるケースに注意
公正証書遺言は厳格な手続きで作成されています。
このため、「無効にはならないのでは?」と感じるかもしれませんが、結論としては、6つの理由で効力を失いかねません。
相続手続きにおいて、遺言書が有効か無効かの確認は極めて重要です。
この記事では注意したいポイントをまとめ、わかりやすく解説していきます。
1.公正証書遺言の効力が消えにくい理由
公正証書遺言は公証役場で作ります。
作成者本人の他に、公証人と呼ばれる役人と、二人の証人がサポートするのが特徴です。
公証人は法務大臣から指定された相続実務の専門家。
しかも、別に証人が二人参加していますから、手続き上のミスは起こりにくいと言えるでしょう。
専門家が作るので、署名や押印を忘れるような失敗は考えにくいのです。
また、公正証書は公証役場で保管しますから、改ざんされるリスクもほぼありません。
そのため、自分で作る自筆証書遺言や、秘密証書遺言に比べても確実性があります。
ただし、人間がやることですから、絶対はありません。
時には手続き上のミスや確認不足によって、無効になるケースがあるのです。
2.無効になる6つのケースとは
以下のケースで、公正証書遺言の効力が消えるおそれがあります。
・遺言能力を欠いている
・口授をしていない
・証人不適格に該当
・遺言の内容に錯誤がある
・公序良俗に反した遺言
・遺言書が撤回された
それぞれの無効になる事項を、詳しく説明していきます。
まず、遺言書を作るには、遺言能力が必要です。
遺言能力とは一定の判断力や、自分の意思がある状態と言えます。
遺言書は本人の意思表示ですから、判断や認知能力が欠けていると、遺言書は無効になるわけです。
具体例としては認知症や精神障害などが、遺言能力の欠如にあてはまります。
口授は、遺言を作る時に本人が公証人に、自らの意思を口頭で伝える手続きです。
この手続きは法律上必須なので、省略すると効力が消えかねません。
例えば、本人が会話できない状態なのに、手話通訳が用いられていない場合などが該当します。
遺言の内容につき「間違いなし」と太鼓判を押すのが証人です。
このため、一定の判断力や立場上の公平さがないと、務まりません。
民法では未成年者の他、推定相続人とその家族などが証人として不適格とされています。
また、遺言書に記載された内容が錯誤と判断された場合も、無効になりかねません。
被相続人の書き損じや、客観的に考えて絶対にしないような遺贈があれば、錯誤として効力が失われることがあります。
公序良俗に反する遺言も無効です。
法的な基本ルールで、社会道徳に反するようなことはできません。
犯罪を行う代わりに報酬を与えるとか、不倫相手の愛人に相続財産のすべてを贈与するような遺言はできないのです。
最後に、遺言作成者が自分で撤回した遺言書も無効になります。
別の遺言を書いたり、以前の分を取り消したりは自由なのです。
遺産分割の前には、別の遺言で撤回の旨がないか、調べておきましょう。
3.意外と遺言書が無効にならないケース
下記のケースでは、無効になりそうに思うかもしれませんが、実は有効です。
・何十年も経った後で遺言書を見つけた
・既に相続人が協議して遺産相続を済ませている
・遺留分権を侵害する遺言になっている
遺言書は本人の死後、長期間経っていても、時効消滅しません。
時効消滅は法定された制度で、権利や義務は一定期間で効力を失うようになっています。
しかし、遺言に関しては適用外です。
このため、本人が亡くなってから、たとえ20年経ってから調査し、
遺言書の存在を知ることになった状況でも遺言は効力を生じる可能性があります。
遺言書の発見前に遺産分割協議を行い、相続財産を分けてしまっても効力は消えません。
この場合には遺産分割がやり直しになるので、揉める原因になります。
トラブルを防ぐためには生前に遺言書の有無を確認し、手続き開始までに見つけておくと安心です。
後は遺留分です。
この制度では、推定相続人が最低限、幾らかは相続財産を取得できるように定められています。
配偶者や本人の子供の取得財産をゼロにして、第三者に全部遺贈することはできません。
最低限、一部は妻や子に与える決まりなのです。
ただし、これに違反した遺言も無効にはなりません。
有効に遺贈が行われた後、減殺請求をおこなって、子供や配偶者が財産を取り戻す流れになります。
なお、兄弟姉妹には遺留分権がありませんので、注意して下さい。
まとめ
公正証書遺言は公証人が作ってくれるので、自筆証書遺言のように日付や書き方を間違うリスクが少ないのはメリットです。
ただ、それでも成年後見人が作った場合などは無効になる可能性が生じるので、注意は欠かせません。
相続については色々な知識が必要で、判断が難しい場面も多いもの。
何かと心配な点がありますので、実績のある事務所に相談するのがおすすめです。